十月の兎

徒然なるままの日記

教室と水槽と私

時代を感じさせるタイトルが多くて

すみません。

「部屋とワイシャツと私」そんな歌謡曲が流行ったんです。

若者の皆さんはご存知ないかもしれません。

平成に入ってすぐの歌ですから。

その頃の話。

 

 

春分を前にして、懺悔します。

6年2組の皆には初めて告白します。

 

今から約30年前。

クラスで水槽を買って、メダカ(だったと思う)の生態を観察しよう、ということになった。

届いた水槽は想いの外、大きかった。

 

当時の私は特に目立つ生徒でもなく、むしろ目立たない方に属していたのだけど、仲の良いみっちゃんとだけは、アホなことをやっていた。

みっちゃんとは家が遠かったので、教室に最後まで残って遊びたいという理由で

掃除用具チェック係という誠にどうでもいい係を率先してやった。

 

2人だけになった教室で、皆の机の中を覗いて、やっぱりアイツの机の中は汚いだの、こっそりラムネを持ってきているから口止料として少しいただいておこうだの、気になる男子の机の上に小さくハートマークを彫るだの、犯罪紛いのことをして、多くの小さな秘密を共有して楽しんでいた。

 

私とみっちゃんは伊達に掃除用具チェック係ではなかった。

長ーい柄の箒をスタンドマイクのように

扱えたし、使われることがないであろう畳用箒が密かにあることを知っていた。

その知識と技量を生かして編み出された遊びが「BOOWYごっこ」。

私が氷室京介で、みっちゃんが布袋寅泰

お互いが何をしていても、どちらかが「オンリ、オンリ、オンリ、オンリー‼︎」と言ったらスタンドマイク(柄の長い箒)とギター(畳用箒)を急いでロッカーから持ち出し、机の上に飛び乗って「オンリーユー」を一曲歌うという実にくだらなくて、楽しい遊び。

その日の私達は盛り上がり、設定はライブ最終日の東京公演。

「サンキューートーキョーー‼︎」と叫びながらスタンドマイクと共に机から飛び降りたと同時に

 

バ キ ッ  。。。。。

 

スローモーション 。。。。。

 

大きかった水槽は掃除用具ロッカーの脇に仮置きされていたのだった。

登り竜の如しヒビが入った。

 

東京公演は即、終了。

私もみっちゃんも、顔面蒼白。

目撃者はいない。

とにかく帰ろう、とそれぞれ帰路に着いた。

息も絶え絶えで帰った。

 

母にだけは話して弁償して返そうかとも思った。

が、しょっちゅう母がヨソ様に「んもー、うちなんて火の車よぉぉ」と言っていたので、うちはかなりキツイんだと思い込んでいて、とても言い出せなかった。

その日、出されたおやつはよく覚えいる。

レディーボーデン ラムレーズン味。

全く楽しめない。

 

夜は、学校が全焼するようにという不謹慎な祈りを何度も捧げた。

 

翌朝、もちろん祈りは届かず。

休む勇気も、行く勇気もないまま

、また息も絶え絶えに登校した。

 

教室に入ると予想通りの展開。

みっちゃんとは「おはよう」以外に言葉は交わさなかった。

 

先生が駆けつけ、1時間目の国語か何かが急遽、学級の時間に変更。

先生が何か知っている人はいるかと聞いた。

 

しーん。

 

晴天の中、教室での長丁場が予想された。

 

吐きそうだった。多分体温35.1℃くらい。

自分が犯人だと告白することもさながら、そこから派生してアホなヤツであることと、放課後の数々の犯罪がバレてしまうことが恐ろしかった。

 

と、ある女子が

「よっちが放課後、教室でボールで遊んでるのをみました。」と。

「それなら僕もみました。」と続々と証言が挙がる。

 

よっち疑惑浮上。

 

よっちはちびまる子ちゃんでいうところの、はまじキャラでいつもふざけていたので、よっちなら納得って雰囲気があった。

よっちは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていた。

先生がよっちに発言を求めた。

「確かに僕はボールで遊んでいました。でも割ってません。でもヒビが入ってるだけなので気がつかないうちに割っていたのかもしれません。わかりません。その時はごめんなさい。」

 

よっち‼︎

 

この時の私のやるせなさ度ったら、夜空の星を全て集めても足りません。

 

保身のためにダンマリを決め込んだ私と

自分のキャラをわかってて突破口を開いてくれたよっち。

ああ、こんなに違うのに、奇しくも誕生日が同じだなんて‼︎

 

先生がまずボールで遊んでいたよっちを注意。皆には憶測で疑うのはよくないみたいな流れでうまくまとめてくれて、水槽事件は終結した。

が、よっちなら仕方ないか、という雰囲気は残っていた。

それからも、よっちは変わらずよっちだった。

自分だったら、理不尽過ぎて、水槽どころか夜の校舎窓ガラス壊してまわることだろう。

 

あの時、正直に話してたら、よっちにだけでも謝っていたら、私の人生展開が違っていたのかなと、思う。

 

実は、只今、近年最高の風邪中。

寝込むほどひどい咳の時に、このことを思い出すことに気がついた。

ずっと言いたかったのかな。

だから書きたかったのです。

 

よっち、6年2組の皆、ごめんなさい。

 

今、うちの娘はメダカの餌やり係です。

因果応報。